2024年1月 新たな年【ペットを飼う】

闘病記【退院後の生活】

ペットを飼いたい

ちょうど4年前、私は引越しをした。ペット可の物件に移ったのだ。

ずっと1人暮らしをしてきた私。それまで特にさみしいと思ったことはなかったのだが、なぜかその時は無性にペットに癒されたいという気持ちに陥った。

保護犬を迎え入れてはどうかと譲渡会に参加したり、ペットショップを見て回ったりしたが、結局飼わなかった。理由は単純だ。今の旦那さんと付き合い始めたからだ。さらにハーレーダビッドソンのバイクを買ったことも要因のひとつだ。なんせお金がかかる。

実家に「ももこ」という柴犬がいる。私が名付け親だ。たまにしか会えないがそれで十分という気持ちになっていた。

それなのになぜだかわからない。また急にペットが欲しくなった。

去年の11月に入籍し、さすがにワンルームでは狭いということで2LDKのアパートに移った。特に意識していたわけではなかったが、よくよく見たらペット可の物件だった。体調も良くなってきたし、子供ができる可能性は0パーセントだし、これはペットを飼えってことなのではないか、と都合よく解釈した。

とはいえ、まだ免疫抑制剤を飲んでいる。抗がん剤もだ。感染には十分注意しなければいけない。病院からもらった資料には、移植後最低1年は動物との接触を避けることを勧めると書かれていた。もともと飼っている人は排泄の処理は家族に任せ、接触した場合は手洗いうがいをするように、と。

移植を受けたのは去年の5月下旬だ。最低1年というルールを守るなら、ペットを飼うのは早くて今年の夏になる。

そのつもりでゆっくり探そう。そう思っていた。本当に。

ペットショップで飼うのも良いが、値が張るし、強制的に何とかパックというものに入れられる。ブリーダーから直接迎え入れた方がいいに決まっている。

私は母親に誰か知らないか聞いてみた。実家のももこは2代目の柴犬だ。長く犬を飼っているのでそういうペット関係の情報を持っているのではないかと期待した。案の定、母親の頭の中に思い当たる人物がいたようで、「聞いてみるわ」と言っていた。

それから2週間後、母親からブリーダーの情報が入った。トイプードル専門のブリーダーさんで、家も結構近い。ちょうどパピーが何頭かいるみたいだし、ブリーダーさんの人柄も見た方が良いから、一度会いに行ったらどうかと言われた。

世の中にはいろんなブリーダーがいるという。実際飼うのは先だが、ひとまず繋がっておいて損はないだろうと思い、正月明けに見に行くことにした。

「飼う飼わないは別として、一度見に来てください。」と言われた時は心の中で強く同意した。そうだ、まだ時期尚早だ、今回はとりあえずブリーダーの人柄を確認しに行くだけだ。

パピーとのご対面

ドキドキしながらその日を迎えた。

ペットショップで窓越しにパピーを見物することはあるが、ブリーダーの家に行って見ることなんて初めてで、楽しみというより緊張のほうが強かった。

家に着くと感じの良いご夫婦が出迎えてくれた。

客間に通され、すぐに2頭のパピーを連れてきてくれた。生後5か月だというパピーはまだ1.3㎏とちっちゃい。知らない人(旦那)に抱っこされ、最初は震えていたが、すぐに慣れておとなしく旦那の膝の上に乗っていた。

つぶらな瞳で私を見るパピー。

この子を迎え入れたい。

見たらダメなやつ。絶対欲しくなる。

そのオスのパピーはトイプードルの中でもタイニーという超小型犬に分類されるそうだ。その子のお父さんが1.8㎏と小さいので、成犬になってもそれくらいだろうと言われた。メスの子もかわいかった。でも、私はオスの、その子が気に入った。

「実は病気をしていまして、今はちょっと飼えないんです。」

私は予防線を張った。このままだと飼ってしまうと思ったからだ。ブリーダーの夫婦はそれに関してあまり気に留める様子はなく、「手指消毒したり何かすれば大丈夫だと思いますけどね。」と言っていた。

それでも私は、今はダメ。今はダメ。夏以降だと自分に言い聞かせた。

「友人もペットを飼いたいと言っていたので聞いてみます。」

なんとか自分を抑え、そう言ってブリーダーさん宅を後にした。友人の話は本当だ。私が飼えなくても彼女が飼ってくれるならあのパピーも幸せではないか、と思った。

それなのに、帰りの車の中、あっさりと結論が出る。

「飼っちゃおうか」

となったのだ。旦那もあのパピーに心を奪われていた。私もだ。

やっぱり見たらダメなやつ。

家に帰り、とりあえず昼食を食べた。そしてブリーダーさんに電話をした。

「いろいろ考えたのですが、うちで飼おうと思います。」

いろいろ考えてはいない。あの場で「病気が。。。」などと言ったものだからそうしておかないとなんだかバツが悪いと思っただけのことだ。

飼うと決まってからは早かった。迎え入れるために最低限必要な物を揃え、トイプードルの飼い方という本まで買って知識を詰め込んだ。

お迎えは1週間後だ。

きなこと初対面の時

医師には事後報告

パピーは「きなこ」という名前に決まった。飼う前からオスでもメスでもきなこにしようと決めていた。

そのきなこがうちに来てすぐに外来受診があった。

黙っていればわからないと思ったが、私は一応医師に報告をした。

「それは事後報告というやつですね。」

医師は苦笑した。私はいつも確信犯、事後報告だ。

「一昔前なら、保健所に連れて行けと言われますよ。私は立場上、そんなことは言いませんけど。ワンちゃんの健康が第一だね。」

聞けば先生のお父さんは獣医で動物病院の院長さんだという。それで立場上、という言葉を使ったのだ。

ホッとした私は、どさくさに紛れてきなこの写真を先生に見せた。自慢したと言ってもよい。親ばかだ。

先生もその写真を見て、「僕を飼って、と言われたんだね」ときなこの気持ちを代弁してくれた。よくわかっていらっしゃる。

カルテにも「トイプードル(きなこ)」と書かれていた。

排泄物に触ったときは手洗いで、それ以外はアルコール消毒でいいそうだ。「とにかくわんちゃんの健康が大事ですよ」と念を押され診察は終わった。

きなこが家族になった。

もし私が再発してきなこの成長を見れなかったらどうしよう。残される旦那ときなこは大丈夫だろうか。そういう不安がないわけではない。

先のことはわからない。

でも、以前に比べれば随分明るい未来を期待することができるようになった。来年の今頃も私は生きているのではないかと思えるようになった。

来年の今頃は、きなこを連れてキャンプに行きたい。ペットと泊まれる温泉旅館もいいだろう。

楽しみが増えた。

※血液検査の結果※

1月外来受診基準値
AST4113~30
ALT437~23
LD275124~222
LDLコレステロール14365~163
白血球7,8503,300~8,600
赤血球326万386万~492万
ヘモグロビン10.511.6~14.8
血小板13万15万8,000~34万8,000
網赤血球1.170.3~1.1%

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