デイキャンプ
4クールの抗がん剤治療が終了した。骨髄検査(マルク)でもがん細胞は検出されず、体調も良い。幸運にもドナーがすぐに見つかり、順調に調整が進んだ。そして次の入院でついに骨髄移植を受けることが決まった。
移植するにあたり、事前にあれこれ検査を受けなければならない。そして放射線を全身に当てたり、大量の抗がん剤を投与したりして免疫をゼロにする前処置というものもある。というわけで、移植の半月前に入院しなければならない。今回も2週間程度の一時退院だ。
ゴールデンウィーク後半には退院できた。彼氏さんもちょうど仕事が休みなため、外食したり、買い物に行ったりすることができた。
次の入院は長くなる。
1日たりとも無駄にしたくない。私はできる限りの時間を彼氏さんと過ごした。
今回の一番の楽しみはデイキャンプだ。
病気になる前は月に1,2回はキャンプに行っていた。真冬でもおかまいなし。大雪の中キャンプをしたこともある。
「デイキャンプならいいんじゃない?」
退院直前に彼氏さんがそう提案してくれた。事あるごとに私が「キャンプに行きたい」と言っていたからだろう。
「行こう!絶対に行こう!」
私は即答した。最後にキャンプをしたのは入院の1週間前。すでに半年が過ぎている。1泊2日のキャンプは無理でも、デイキャンプなら大丈夫だろう。それに気温は平年より高い。屋外で数時間過ごしても風邪をひくことはなさそうだ。
ワクワクしながらその日を待った。
キャンプ当日。快晴だった。
テントもタープも張らない、本当にお手軽なデイキャンプ。キャンプ飯もスーパーで出来合いの物を買って済ませた。それでも私は幸せだった。屋外で季節を感じながら淹れたてのコーヒーを飲む。そして木々に囲まれながらぼーっと空を見上げる。時折吹く風が心地よい。いつまでもそこに居たい気持ちになった。
またこうやってキャンプを楽しめるだろうか。
来年の今頃、またキャンプに行けるだろうか。
もちろん考えても答えは出ないのだが。
2時間程度のデイキャンプはあっという間に過ぎた。楽しい時間は本当に早く過ぎる。
面会が解禁になる!
入院中に仲良くなった人がいる。ほとんど同時期に最初の入院を経験し、同じようなサイクルで入退院を繰り返している。病名は異なるが、副作用など被ることも多く、情報交換をしている。というか、いろいろ教えてもらっている。その人は私より少し先に移植をする予定で、すでに再入院している。
ある日その人から朗報が舞い込んできた。
「面会が解禁になったよ!」
私はびっくりして携帯を落としそうになった。コロナ禍でずっと面会が禁止されていたため、その制限がなくなるなんて全く予想していなかったからだ。
そうか、5類になったからか!
念のため病院のホームページを見た。言う通りだった。家族(パートナー含む)と親族に限り面会ができると記載してあった。彼氏さんは内縁の夫、つまりパートナーとして病院に申告しているため面会できる。
会って話ができるというのはつらい入院生活の励みになる。
すぐに彼氏さんに伝えた。いつも入院前日は二人とも口数が少なく、時には泣いてしまうこともあったが、面会ができるとわかり表情は明るかった。
いよいよ骨髄移植。山場だ。
この半年間頑張ったのだ。移植もきっと乗り切れる。
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