発熱
昨晩から続いた胃の痛みは朝には治まっていた。だが、ほっとしたのもつかの間、目を開けてすぐに異変に気付いた。
なんと、壁から天井がぐるぐる回っていたのだ。
一瞬で気持ちが悪くなった。
もう一度目を開けてみたが同じだった。私は目をぎゅっと閉じて症状が治まるのを待った。
あれ、頭痛もする。
最悪だ。
私はすぐにカロナールを飲んだ。そのついでに熱を測ると、まさかの37.7度。
熱まである。
入院してから体調を崩すことはなかった。むしろ万全の態勢でここまで来た。それなのに今日から、というときに頭痛に発熱なんて。
今日は首にCV(中心静脈カテーテル)を入れる予定だ。体調が悪いとどうなるのだろう。延期だろうか。それは困る。移植日はずらせない。
不安を抱えながらひとまず身体を休めた。
めまいはその後すぐに治まった。カロナールが効いたのか、熱も37度前半まで下がった。ここでは37.5度未満はそれほど問題視されない。平熱の範疇だ。
これくらいの熱ならCVを挿入できるだろうか。
医師の判断を待つしかない。
CV挿入
午後からも相変わらず微熱はあった。だが、予定通りCV挿入は行うことになった。
私は心から安堵した。
すでにCVを挿入している知人の話によると、入れる時は特に痛くないということだ。鵜呑みにしてもいいだろうか。首にあんな管を入れるのだ。いくら麻酔をしたとしても無痛ということがあるのだろうか。
予定は14時。
私は緊張していた。人の足音がするたびにどきっとした。その足音が私の部屋の前で止まるのではないかと怯えた。そしてそれは間違いで、隣の部屋の扉が開けられ、足音が聞こえなくなるとほっとする。それを何度か繰り返した。
14時15分。
ついに私の部屋の扉が開けられた。
「行きましょうか。」
と一言。
なんだか死刑執行の宣告を受けたようだ。
看護師に案内され、私はナースステーションの裏にある処置室に入った。
その後はあっという間だった。
サクサクと処置は進み、ものの15分で首にカテーテルが挿入された。
痛かった。
カテーテルが静脈に押し込まれる時に痛みが走った。思わず「痛い!」と声が出た。痛くないなんて誰が言ったんだ。
点滴だらけ
カテーテルが無事に入り部屋で休んでいると、看護師が夕方のバイタル測定にやってきた。熱を測ると、また38度近くまで上がっていた。
すぐに抗生剤が始まった。そのほかにもいろいろ繋がれ点滴だらけになった。
この個室、広いのはいいが、トイレや洗面台まで距離がある。毎回輸液ポンプのコンセントを全部抜いて点滴スタンドを移動させるのは面倒だ。というわけで、延長コードを点滴スタンドに固定し、部屋の中を行き来するわけだが、これが結構重い。当分の間この生活が続くそうだ。
夜中、一度下がった熱がまた上がってきた。身体もしんどい。
再度カロナールを飲む。
主治医がたまたま当直だったため部屋まで来てくれた。
あまりに高熱だと放射線照射ができないと言う。ということは骨髄移植もできないということだ。その場合は再調整になるとのこと。
それは困る。
やっとここまできたのだ。何としてでも骨髄移植を受けたい。
目が覚めるたびに熱を測る。下がっている時もあれば37.5度を超えている時もある。
熱よ、下がれ!
私は祈るような気持ちで一晩過ごした。
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