寛解導入療法と地固め療法の副作用【私が経験した副作用の話】

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副作用は個人差が大きい

白血病の治療は確立されている。細かいところで違いはあるだろうが、まず寛解導入療法を受け、次に地固め療法を受けるというのは皆同じだ。地固め療法を何クールやるかは人によって違う。私の場合は、4クールやった後で骨髄移植を受けたので5クール目はなかった。

寛解導入療法ではステロイド(プレドニン)と抗がん剤を服用し、地固め療法では抗がん剤を点滴投与した。吐き気は一度もなく、今振り返ってみてもそれほどひどい副作用はなかったように思う。医師から脱毛すると思いますと言われてもまったく抜けなかったこともあった。個人差が大きいのだろう。

ここでは私が経験した副作用について紹介する。もちろん、そのすべてを皆が経験するわけではないし、私に現れなかった副作用が出ることもあるだろう。参考程度に見ていただければと思う。

発熱

発熱には大きく二つの原因がある。抗がん剤治療に伴い免疫力が低下し、何かに感染して発熱する場合と、白血球が回復するときに発熱する場合だ。

私の場合、一度も感染による発熱はなかった。発熱するとすぐに血液培養し、感染によるものかどうか確かめるのだが、いずれも感染源は特定できなかった。医師によると、抗がん剤投与後に下がった白血球が回復するときに熱が出ることがあるようで、私の発熱はおそらくそれだろうとのこと。

病気になる前の私はほとんど熱を出したことがない。インフルエンザに罹患した時に38℃程度の熱が出たのが最後だ。それも10年前のことだ。

地固め療法は全部で4クールやり、そのうち3クールで40℃を超える高熱を経験した。40℃なんて聞くともうフラフラで寝ていてもしんどいのではないかと想像するかもしれないが、結構平気だった。なんなら検温するまで気づかなかったくらいだ。

どれくらいの期間熱が続いたかというと、1クール目は1週間ほど熱が上がったり下がったりしてなかなか落ち着かず退院が延びてしまった。それ以降の熱は数日で治まっている。

抗がん剤治療をするとどうしても免疫力が低下するので、発熱というのはかなり頻繁に起こる副作用だと言える。

関節痛

関節痛、これは抗がん剤の影響というより、おそらくはステロイドの副作用だといえる。寛解導入療法ではかなりの量のステロイドを服用していた。それが退院とともに中止となった。ステロイドの離脱症状ともいえる倦怠感や食欲不振はほとんどなかったが、関節痛はかなり顕著に現れた。身体中のあらゆる関節が痛かった。指を曲げるのも、寝返りを打つのも、そして歩くのも痛い。

私の体はどうなってしまったのだろうと不安な日々を過ごした。医師に聞いても、抗がん剤の副作用ではないはずだ、心配ならリウマチの検査をしましょうとだけ言われた。

その疑問に答えてくれたのはベテラン看護師だった。彼女はもしかしたら、という前置きで、関節痛はステロイドの離脱症状ではないかと説明してくれた。それがなんだか妙に腑に落ちて、安心したのを覚えている。離脱症状ならばいつかは治まるからだ。

痛みはある日急に軽減する。そして数日から1週間でまったく痛くなる。不思議なくらい。

皮膚の黒ずみ

皮膚の黒ずみ、これもおそらく副作用の一つだろう。自分の下腹部を気にしてみることがなかったので、いつから黒ずんでいたのか正直わからない。

ある日、ふとお腹を見ると、お腹周りだけ色が違うことに気づいた。2クール目が終わったくらいだっただろうか。

痒いわけでもなく、ただ黒ずんでいるだけなので医師にも言わなかった。よくある副作用なのだろう。患者仲間も同じだと言っていた。

そして数か月くらい経った頃だったか、気づいたら元の色に戻っていた。

脱毛

抗がん剤と聞いてまず思い浮かんだ副作用が脱毛だった。1クール目が始まる前から帽子が必要だろうか、ウィッグを買っておいた方がいいだろうかと考えていた。

1クール目の退院間近に毛が抜け始めた。特にシャワーを浴びるとゴソッと大量の毛が抜ける。このまま行くとあっという間に丸坊主になると思っていたのだが、1週間もすると脱毛はピタッと止まった。脱毛の具合はというと、自分の中では薄くなったような気がしたのだが、他人からしたらあまり変わっていないという程度だった。

脱毛するかどうかは個人差が大きいようだ。そして使用する抗がん剤の種類にも左右される。

2クール目で使用した抗がん剤はメトトレキサートというもので、医師から脱毛すると思います、と言われていた。でも私はまったく抜けなかった。その後の3クール目、4クール目も抜けなかった。ちなみに、4クール目は1クール目と同じキロサイドを投与したのだが、どういうわけか4クール目の時は脱毛しなかった。

私は骨髄移植を受けたので、最終的には脱毛したが、化学療法だけの場合、早まって髪の毛を切ったり、ウィッグを買ったりしなくてもよいだろう。余談だが、昔友人が大腸がんになり、脱毛するだろうと高価なウィッグを買ったが、結局まったく抜けなかったと言っていた。

高血圧

抗がん剤を使用すると血圧が高くなることがある。

病気を発症したときも150台と高く、最初の入院で降圧剤が処方された。それが落ち着いてきたので薬は中止したのだが、再入院して抗がん剤を投与するとまた150台になった。

4クールとも血圧が上がったわけではないし、周りを見ても高血圧とは無縁の患者さんも結構いたので、これも個人差があるのだろう。

降圧剤を一度飲むと一生飲み続けなければいけないのではないかと危惧したが、そんなことはない。血圧が落ち着いてきたら中止となった。

食欲不振

抗がん剤と聞いて脱毛と同じくらい副作用として想像できるのが食欲不振ではないか。吐き気と言ってもいい。ベッドサイドでゲーゲー吐いて食べられない、そんなイメージが強かった。

それは一昔前の話のようだ。今の制吐剤はとてもよく効く。4クールともまったく吐き気は起きなかった。そして食欲もなくならなかった。

同じ部屋の向かいの女性は毎日のように嘔吐していた。あれ、人に寄るのかな、と思ったが、その人は白血病ではなかったので、抗がん剤の種類も量も違うからだろうと理解した。

では、私が食欲不振に苦しんだのはいつかというと、最初の入院、つまり寛解導入療法の時だ。腹水が溜まりに溜まって臨月みたいにお腹がパンパンだった。体調もどん底だ。食べるとすぐに胸がつかえるような感じになり、人生で初めて食欲不振というものを経験した。

食べられるようになるまで3週間程度かかった。食欲がないというのは本当に辛い。

睡眠障害

私は元来不眠とは縁のない生活を送っていた。いつでもどこでも寝られる。ある意味特技であると思っていた。

それが入院して眠れなくなった。初めての入院で、体調も悪く、そして大部屋というのが影響していると思っていた。

でも看護師に相談したら、抗がん剤の副作用で不眠になることがあるとわかり、我慢せず眠剤を飲むことにした。

ただ、仮退院中は眠剤を飲まなくても眠れていたので、やはり私の場合は環境要因が大きかったと思う。

指先の痺れ

指先が痺れ出したのは2クール目が終わったころからだ。程度は軽かったと思う。ふと指先に意識を向けると、特に親指と人差し指が痺れている。その程度だった。

それでも、悪化したら嫌だな、と思い医師に相談したところ、タリージュという薬が処方された。即効性はないようで、私も気休め程度に飲んでいた。が、気づいたら治っていた。まったく意識していなかったのでいつから効果が表れたのかわからない。明らかなのは薬を飲み始めて2か月後、骨髄移植をする前には痺れは止まっていた。

知覚過敏

私は冬でもアイスクリームを食べる。それもほぼ毎日。それなのに、最初の入院が終わって仮退院している時に、アイスクリームを食べたらえらく歯にしみて気分まで滅入った。知覚過敏だった。

その次の入院で歯科受診をお願いした。

抗がん剤の副作用で知覚過敏というのはあまり知られていないが、実はそういう副作用があることが報告されているんだと説明を受けた。

で、治す方法はないかというと特にないそうだ。歯がしみないようにコーティングするくらいしか方法がないと言われた。アイスクリームを食べなければ済む話なので、コーティングは遠慮した。

症状はけっこう続いた。3,4か月は治らなかった。

便秘

病気になって初めて経験する事が多い。便秘もその一つだ。最初の入院で5日間も便通がなかったときは焦ったものだ。下剤がすぐに処方され、反応便があるまでただひたすら待った。

抗がん剤治療をすると便秘になる。ということで、治療開始時に便秘でなかったときも下剤を飲むように言われた。結局、骨髄移植で下痢になるまで断続的に下剤を飲み続けた。

口腔トラブル

寛解導入療法で口腔内のトラブルはなかった。

地固め療法の2クール目、メトトレキサートを投与したときだけ、喉の奥と舌の付け根辺りが痛くなった。メトトレキサートではよく起こる副作用だ。投与中は両顎に冷えピタを貼り、最初の30分は氷をなめ続けるという予防策を講じる。それだけ口腔トラブルが起きやすいということだ。そうやって対処をしても多少は炎症が起きた。

すぐにアズノールうがい液が処方され、2,3日うがいを続けたら症状は治まった。大事に至らず済んでよかった。メトトレキサートは1回の入院で2サイクル行う。2回目も同じように口の中が痛くなったので、やはり副作用として出やすい症状なのだろう。

むくみ

私の以前の仕事は老人ホームの施設長だ。足が象のようにパンパンにむくみ、針かなんかでツン、と刺したらぴゅ~と水が飛び出すのではないかというご老人を何人も見てきた。

それが自分の足に起きた時は衝撃だった。

むくみは足だけにとどまらず、顔も人相が変わるくらいむくんでいた。腹水もたまったし、なんなら肺にも水が溜まった。

これは寛解導入療法の時に起きたものだ。何かの副作用なのかはわからないが、最初の入院で一番つらかったのがこのむくみだった。自然には水が抜けず、結局利尿剤を使った。

完全に水が抜けるまで1か月近くかかった。そういえば、この時は体重が一晩で4㎏近く増えたこともあった。52㎏だった私は、入院して2週間足らずで60㎏という新記録を樹立した。体重計が壊れたのかと何度も測りなおしたのを覚えている。

以上が私が経験した副作用と思われる症状だ。

症状が現れた時はいつか治るのだろうかと不安になったが、私の場合はありがたいことに全て治った。

副作用はその種類も程度も人によって違う。少しでも気になることがあればすぐに医師や看護師に相談することをお勧めする。

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