窓口での支払いを抑えたい【高額療養費制度②】

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退職したら国民健康保険に切り替える?任意継続した方が良い?

病気を発症した時、私は会社員だった。当然、社会保険に加入していた。休職した月は有給消化で処理してもらい、翌月から傷病手当金を申請し、現在(令和5年9月時点)も受給中である。

休職して半年ほど経ったとき、会社から連絡がきた。復帰のめどを聞かれたのだ。連絡をくれた事務員の話によると、私の勤続年数だと、休職できるのは半年まで。その時点で復帰のめどが経っていない場合は退職扱いになる、とのことだ。就業規則にそう謳ってあるらしい。そんな項目があったかどうかは記憶にないが、おそらく保険料を支払いたくないのだろう。

その時私は骨髄移植を受けた直後で体調はすこぶる悪かった。職場復帰のことなど到底考えられる状態ではない。ただ、復帰のめどは経っていないと答えたら、即クビになるのは間違いない。私はインターネットで骨髄移植を受けた人たちの情報を検索し、1年くらいだと答えた。

数日経って会社から連絡がきた。「今月で保険を切ります」とのこと。

実は会社に戻る気はなかった。入院直前に異動になったが、その後そのポジションは「必要なし」と判断された。また、もともと所属していた老人ホームの管理職はすでに後任者に引き継いでいる。つまり職場に復帰しても戻る場所がない。体力的にも精神的にも以前のように仕事ができるという自信もなかった。どこかのタイミングで退職の意向を伝えるつもりだったが、まさか突然保険を切りますと言われるとは思っていなかった。

世知辛い世の中だ。

会社を退職した場合、加入していた社会保険を任意継続するか、国民健康保険に加入するか、選択肢は2つある。

任意継続をする場合の条件

☑ 資格喪失日の前日までに健康保険の被保険者期間が継続して2か月以上あること。
☑ 資格喪失日から20日以内に申出書を提出すること。(郵送の場合は20日以内に書類が到着すること。)

となっている。私の被保険者期間は2か月以上あり、退職してから20日以内に書類を提出することもできる。果たして任意継続をするべきかどうか。

任意継続をするメリットがあるのかどうかは個々の状況によって違う。一番気になるのは保険料だろう。在職中の社会保険料は会社と折半だ。それが退職して任意継続になると全額自分で払わないといけない。それでも任意継続にした方がいいのはある程度の所得がある人だ。正確なところは加入している保険者に確認してもらいたい。

私の場合、任意継続にすると以前より余分に保険料を払わないといけなくなる。ただ、このまま社会保険に加入しておくメリットが一つだけあった。多数回該当だ。すでに12か月の間に3回以上高額療養費の支給があるため、区分ウの私の自己負担限度額は4万4,000円に引き下げられている。これが国民健康保険に切り替えると多数回該当がリセットされるのだ。つまり、自己負担の上限額がまた9万円程度に戻ってしまう。

医療費の自己負担限度額を4万4,000円にするため高い保険料を払い続けるのか、国民健康保険に加入して保険料をこれまでと同等に抑えるのか。

悩ましいところだ。

結局、私は任意継続をやめ、国民健康保険に加入した。

この時点で骨髄移植は無事成功し、退院のめどはたっていた。退院後は外来受診になる。もちろん合併症などで体調が悪化すると入院は避けられないが、順調にいけば外来だけで済む。今までのように医療費が毎月4万4,000円を超えることはそれほど多くはないだろう。長い目で見ると、毎月の保険料を抑えたほうが出費は少ないと考えた。

ちなみに、任意継続できる期間は2年間だが、保険料が思いのほか負担になるようなら途中で国民健康保険に切り替えることもできる。

高額療養費の申請について

社会保険の場合は自分から申請しないといけない

入院すると自己負担額を超える人がほとんどだ。現在はオンライン資格確認という制度が整っており、限度額適用認定証がなくても病院が自己負担限度額を調べてくれる。そして入院にかかる医療費は自動的に高額療養費制度が適用され、自己負担限度額を超えた分は請求されない。

では自分で高額療養費を請求することはあるのだろうか。

私はこれまでに一度だけあった。社会保険に加入していた時だ。

一時退院中に外来受診した際の処方薬がかなり高額だった。入院中は院内処方のため治療費と合算され自己負担限度額までしか請求されなかったが、外来受診は院外処方。いったん3割負担分を支払わなければならない。

自己負担額は医療機関ごとに計算され、同じ医療機関であっても、入院と外来は別、医科と歯科は別で計算される。そして、薬局で払った薬代は処方箋を交付した医療機関に含めて計算される。合算できるのは一医療機関の医療費が月に2万1,000円以上だった場合のみだ。

社会保険の場合は自分から申請しないといけない。

1週間分でおよそ6万円を支払った。その月の入院費もすでに自己負担限度額を超えていた。払い戻しの手続きをしないと大損だ。初めてのことでよくわからなかったため、病院の相談室を訪れ、手続きについて教えてもらった。

まず、社会保険の場合(協会けんぽ)、自ら払い戻しの申請をしないとお金は戻ってこない。待っていても自己負担限度額を越えましたよ、とは教えてくれないということだ。

病院に申請用紙も置いてあったため、私はその場で記入した。領収証の写しは必要はないが、医療費を記入する箇所があるため、領収証は必ず保管しておくように。

書き方が良くわからない場合はソーシャルワーカーに聞くとよい。私も相談室で聞きながら書類を完成させた。ちなみにレセプトの関係上、申請は限度額を超えた月の翌月初めに行い、実際に払い戻しがあったのは2か月後だった。最短で診療月の3か月後にお金が返ってくることになる。

国民健康保険は通知が来てから申請すればよい

国民健康保険の場合も高額療養費制度で払い戻しを受けることができる。社会保険と違い、限度額を超えた場合、診療月の約3か月後に市区町村から通知が来るので、必要書類を用意して申請すればよい。

申請時に持参するものは、①被保険者証 ②治療費の領収証 ③振込先預金通帳 ④届いた通知書 ⑤世帯主および受診者のマイナンバーカード ⑥本人確認できるもの となっている。

ちなみに、高額療養費は診察月の翌月から2年を経過すると申請することができないので、忘れずに手続きをするように。

多数回該当について

保険者が変わると多数回該当はリセットされる

高額療養費制度により自己負担限度額を超えた分は払い戻しされる。区分ウの私の自己負担限度額は9万円程度。入院となると、これに差額ベッド代、給食代、保険適用外の費用が加算される。白血病の治療は入退院を繰り返すため、自己負担限度額が9万円だとしても毎月の出費が痛い。

そんな時、なんともありがたい制度がある。

多数回該当だ。

これは 直近12か月の間に3回以上高額療養費の支給があると、4回目から自己負担限度額が引き下げられるというものだ。私の場合、4万4,000円とおよそ半額になる。この金額、数日入院するとすぐに超える。

ここでひとつ注意事項がある。保険者が変わるとこの多数回該当がリセットされるということだ。退職の意思がありながらそれを引き延ばしていた理由はこれだった。退職して国民健康保険に加入しても傷病手当金は継続してもらえる。だが、この多数回該当がリセットされ、また上限が9万円近くになるのはなんだか損をした気持ちになる。かといって任意継続をすると今度は保険料が跳ね上がる。

会社の都合で保険を切られたのでしょうがなく国民健康保険に加入することにしたが、できれば保険者は変えたくなかった。退職するなら早めにするか、できるだけ長く在籍しておいた方が良いと思われる。ちなみに、もし転職したとしても保険者が同じなら多数回該当はリセットされない。

転居すると多数回該当はリセットされる?されない?

社会保険の場合は、引っ越しをして住所が変わっても問題ない。保険者が変わるわけではないからだ。

では、国民健康保険の場合はどうだろうか。

私はA市で国民健康保険に加入し、数か月後の月途中に同一県内のB市に転入した。転居月の医療費は自己負担限度額を超えなかったが、A市に住民票があったその前の2か月は超えている。つまりあと1回高額療養費の支給があると、次から多数回該当が適用される。だが、転居したことにより保険者がB市変わった。

多数回該当がリセットされてしまうのではないか。

これについて病院の相談員に聞くと、「そうですね、リセットされます。」との回答だった。が、なんだか腑に落ちなくてインターネットで調べた。それによると、

平成30年4月から多数回該当制度が拡充され、県内の異動であれば世帯の継続性が保たれていることを条件として、前住所地のカウントが引き継がれることになったそうだ。

私の場合も県内の異動のため、おそらくリセットされない。

良かった。

ちなみに、月途中で異動した場合の自己負担限度額は、A市で限度額の50%、B市で50%となり、転居月の自己負担限度額が結果として2倍にならないようになっている。

※上記の情報は令和5年9月時点のものです。また、年齢、家族構成等によっても内容が異なりますので、各保険者に確認されることをお勧めします。

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