2023年1月 地固め療法・1クール目【まだ残っている!がん細胞】

闘病記【発症~治療】

入院前日

楽しい時間はあっという間に過ぎる。

まだ1週間あると思っていた一時退院も、あと3日、あと2日と減っていき、再入院の時が迫ってきた。一時退院する前は退院している自分を想像できなかったが、今度は再入院している自分が想像できない。気持ちが追い付かないのだろうか。特に今回は入院。自由な毎日が奪われるわけだ。心が折れそうになる。

入院前日の夜。

我慢していた気持ちがあふれ、彼氏さんと二人で泣いた。

明日の今頃、私は病院のベッドの上だ。今隣にいる彼氏さんはいない。彼も同じだ。明日仕事から帰って来た時、私はこの部屋にいない。明日になると私たちはそれを否応なく思い知らされるのだ。

思う存分涙を流した。そして彼が言う。「もう泣かない。明日は笑顔だよ。」

初めての入院の時もそうだった。入院当日は笑顔で別れる。今後もこれが二人のルールになりそうだ。

自由が終わる日

入院の朝がやってきた。仕事に行く彼を玄関で見送る。

「いってらっしゃい。」と私。

「がんばってね。」と彼が言う。

約束通り、お互い笑顔だ。

前回の入院時は二度と彼に会えないのではないかという不安に押しつぶされそうになった。どれだけ続くか分からない入院。病気のこともよくわからずインターネットの情報に振り回された。その後確定診断がおり、主治医から治療方針を聞くと不安は少し和らいだ。今後は入退院を繰り返しながら抗がん剤治療を受ける。入院期間も1回につき数週間から1か月程度だ。退院の期間は長くはないがそれでも一時退院できるのは励みになる。

病棟へ行く前にまず血液検査を受け、心電図、胸のレントゲンを撮った。検査結果が出ると簡単な診察があり、入退院センターで手続きを済ませると病棟へ案内される。

主治医の話では、早速明日から抗がん剤治療が開始されるとのこと。最初の入院で行った寛解導入療法でも抗がん剤治療は受けている。だがそれは飲み薬だけだ。今回から始まる治療は点滴で抗がん剤を投与する本格的なものだ。となると、気になるのは副作用。吐き気はあるのだろうか。脱毛するのだろうか。不安は尽きない。

明日からの治療に向けて、この日は二の腕にピックという中心静脈カテーテルを入れることになっていた。最初の入院でもピックを入れたが、「二本出し」というもので一時退院するときに抜かないといけない。今回は「一本出し」のピックを入れるのだが、これだと一時退院の時も「持って帰れる」、つまり抜かなくてもよい。うまくいけば半年程度入れっぱなしにできるというのだ。このピックは本当に便利で、このピックから血液を採取することもできるため、採血のたびに針を刺されるという苦痛がない。

ピックの挿入は手術室で行う。体力が回復していた私は、そこまで主治医と一緒に歩いていくことになった。

がん細胞はまだ残っている。

歩き始めた時だった。

「そういえば、年末にやった骨髄検査の結果なんですが、まだがん細胞が残っていました。今日からスプリセルを中止して、アイクルシグという別の薬に変えます。」

と医師が言った。しかも、まるで世間話をするかのようにさらっと。

え?え?え?

がん細胞が残っている?

それって、結構込み入った話ではないのですか?

私の頭の中は一瞬にして真っ白になった。

がんの告知もそうだったが、今回もそうだ。結構重要な話をいとも簡単に、何の前触れもなく突然伝えられる。

私の勝手な思い込みだったのかもしれないが、最初の入院で受けていた治療の名前が「寛解導入療法」となっていたため、がんは「寛解」つまりゼロになったと思い込んでいた。そのため「がん細胞が残っている」と聞き動揺したのだ。さらに、スプリセルを中止すると言われて落胆した。スプリセルはフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の特効薬として登場した救世主という認識だったからだ。別の薬に変更して大丈夫なのか、もしかして治らないんじゃないか、と疑心暗鬼になった。だが、医師はそこまで危機感を持っていないように見える。薬を変更するだけのことで、大勢に影響はないといった感じだ。私はそんな医師の様子を見てなんとか自分を納得させた。そうだ、きっと私が思っているような深刻な状況ではないのだ、と。

ちなみに、スプリセルという薬、かなり高価だ。一時退院中に外来受診があり、院外処方を受けたのだが、会計時に値段を聞いて目が飛び出るくらい驚いた。2回も聞き直した。なんと、わずか1週間分で5万円を超えたのだ。もちろん3割負担の金額だ。高額療養費制度で後から戻ってくると分かっていても躊躇する金額だった。

ピックの挿入は30分程度で終了した。明日から始まる抗がん剤治療。全てが初めてのことばかりだ。漠然とした不安はあるが、想像ができないためその不安もどこか現実味がない。

この日は薬剤師が病室を訪れ、抗がん剤の種類や治療の流れについて説明をしてくれた。入院中、毎日抗がん剤が投与されるのだと思っていたが、全く違っていた。今回の抗がん剤投与は4日間のみ。血液の数値が安定したら一時退院できるようだ。

入院初日の夜。隣に彼氏さんがいないことを改めて実感した。彼も今頃、部屋で一人なんだ。

明日からの抗がん剤治療。頑張ろう。そして早く元気になって退院しよう。

目を閉じると、私はすぐに深い眠りに落ちた。

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※血液検査の結果※

寛解導入療法終了時地固め療法1クール目初日基準値
白血球3,9603,6203,300~8,600
赤血球262万215万386万~492万
血小板16万6,00023万4,00015万8,000~34万8,000
AST142213~30
ALT36367~23
LD249201124~222
尿素窒素18.55.08~20
血清クレアチニン0.780.860.46~0.79
寛解導入療法終了時と2週間経過した今回の入院初日の血液データ。特に大きな変化はない。

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