day16 白血球の値が一気に上がる
骨髄移植の場合、平均2週間程度で生着するという。
移植が終わって今日で16日。
そろそろ生着してもよい頃だ。というか生着してもらわないと困る。
昨日の白血球の値は370だった。しばらく10とか20だったことを思えばかなり増えたと言えるが、まだまだ下限値を大きく下回っている。
朝9時を回るとソワソワする。
医師が血液検査の結果を持って病室を回る時間だからだ。
トントン、とドアをノックする音がして主治医が入ってくる。今日の数値は如何に、と期待しながら出迎える。
「白血球の値がだいぶ増えてますね。」
医師は私に血液検査の結果を見せてきた。
「1990」という数字が目に入った。
おおおお!!!!
昨日の370から一気に増えた。ついに来た。
1,000を超えたといってもまだ一度だけだ。生着したとは言えない。それでも昨日よりかなり前進したような気がして嬉しかった。
網赤血球の値がまだ低いが、これがもう少し増えたら大丈夫でしょうと言われた。そして、週明けから、つまり3日後からは病室を出て、廊下で歩く練習をしてもよいとのこと。
ついに解放される。広い個室とはいえ、かれこれ3週間この部屋から出ていない。外界から遮断され、食事、排泄、シャワーという最低限の活動を毎日繰り返すだけだ。さすがに気持ちが滅入ってくる。
よし、しっかり食べてリハビリを頑張るぞ。
などと意気込んでいたが、現実はそう甘くなかった。食べられそうだと思って買ってきてもらった茶碗蒸しに手を付けたが、ほとんど食べられなかった。まったく味がしないのだ。味覚障害は思った以上に食欲に影響を与える。
そういえば、コロナウィルスに感染した友達が、後遺症で味覚障害になり体重が5㎏減ったと言っていた。何を食べても美味しくないのだから当然だろう。
口内炎と同じでこの味覚障害も必ず良くなるはずだ。味がしそうなものを探して少しでも口から栄養を摂ろう。
白血球が増えて喜んでいたのもつかの間、熱っぽいなと思って熱を測ると37.8度だった。1週間前と同じだ。それほど高熱ではないが、看護師に伝えたらすぐにステロイドが投与された。
骨髄移植後の発熱はよくあることだ。40度を超える高熱が出ることもある。幸い私の場合は前回も今回も37度台と微熱で、翌朝には平熱に下がっている。
アラフィフの私。大人になってから熱を出したのはインフルエンザに感染した時だけだ。子供のころも熱を出した記憶がほとんどない。それが病気になり、何度か発熱を経験した。40度を超えたことも数回ある。この半年で一生分の熱を出したのではないだろうか。
生着すれば免疫力もあがり、熱が出ることも減ってくるだろう。
白血球よ、明日は今日よりも増えていてくれ。
day17 さらに白血球が増える
昨日上がった熱はすぐに平熱に戻り、再度上がることはなかった。
そして、なんと今日の白血球の値は3,720だった。
昨日よりもさらに増え、いきなり基準値の下限を上回った。白血球を上げる薬を投与しているとはいえ、これには驚いた。
看護師に生着したのかと聞くと、「先生も生着かなーとは言ってたけど、生着したとはまだカルテに記載されていないから、何とも言えないかな。」と言われた。
もどかしい。
早く「生着した」という言葉を聞きたい。
白血球数が1,000を超え、それが3日間維持できれば遡って最初の日を生着日とするらしい。私の場合はまだ2日目だ。明日になって数値が下がり生着不全となる確率はかなり低いと思われる。それでも何が起きるかわからない。確率が100%でない限り、油断はできない。
その後主治医も病室に来てくれたが、私の心配とは裏腹に、まあ、大丈夫でしょう。と呑気な感じだ。患者で生着不全だった人はいなかったのだろうか。それにしても、この先生が大丈夫だと言うと大丈夫な気がしてくるから不思議だ。
白血球が爆上がりして気分が良かったのか、お昼ご飯はお粥を食べてみようという気持ちになり、なんと完食することができた。完食しても100キロカロリーしか摂れないのだが、摂取カロリーよりも250gのお粥を全部食べれたことが嬉しかった。
このまま順調に食べれるようになれば点滴がまた1つ外れる。そして全ての点滴が要らなくなって、点滴スタンドから解放されたらどれだけ自由になるだろう。
その日はそれほど遠くないかもしれない。
このまま何事もなければ。
※血液検査の結果※
| day16 | day17 | 基準値 |
白血球 | 1,990 | 3,720 | 3,300~8,600 |
赤血球 | 326万 | 289万 | 386万~492万 |
ヘモグロビン | 9.7 | 8.6 | 11.6~14.8 |
血小板 | 2万 | 4万3,000 | 15万8,000~34万8,000 |
網赤血球 | 0.29 | 0.32 | 0.3~1.1% |
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