2022年12月末 一時退院【食べられる幸せ】

闘病記【発症~治療】

年末年始を満喫する。

一時退院。その期間は患者によってさまざまだ。

当然のことながら、血液内科の患者の多くは血液のがんを患っており、抗がん剤治療のため入退院を繰り返す。必然的に顔見知りとなり、どちらともなく話しかける。そしてデイルームはそんな患者たちの交流の場所となり、そこで様々な情報が行き交う。

入院当初は体調が良くなかったこともあり、ほとんどデイルームに行くことはなかった。それが歩けるようになるとベッドにいるのが退屈になり、自主トレと称して病棟内を歩いたり、筋力トレーニングをするようになった。そこで他の患者とも少しずつ話をするようになった。

半年前から入退院を繰り返し、年末年始も病院だ、というおじさん。笑顔だったが、やはりどこか寂しそうに見えた。また、私と同じ時期に入院したという女性は、一時退院の期間が数日しかないという。そう思うと、2週間退院できる私はラッキーなのかもしれない。

12月27日に退院。彼氏さんもちょうど年始年始の休みに入ったため、二人の時間を満喫することができた。彼は毎日ご飯を作ってくれた。私の食欲はびっくりするほど旺盛で、数週間前には考えられなかったくらいの量を食べることができた。

退院したばかりの時は、まだまだ二の腕くらいの太さしかなかった太ももが、1週間であっという間に太くなった。筋力はさすがに元通りとはいかないが、とりあえず見た目は確実に戻っていった。

病院の給食ではどれだけ食べても身にならず、体重は減る一方だった。他の患者が話していたのを思い出した。

「大体みんな、退院中に太って、入院で元に戻る。良いダイエットだ。」

確かにその通りだ。私もそうなると確信した。

「食」で気を付けること

退院前に予約した焼肉屋にも行った。血液の数値は安定してきたとはいえ、感染には十分気を付けないといけない。人混みも避けなければいけない。そこで、個室のある、なるべく清潔そうなお店を選んだ。

焼けば何でも食べられる、というわけではない。やはり、ホルモンなど内臓系のお肉は避けたほうが良い。タン、カルビ、ロースという王道のお肉に留めておいた。

実はうっかりサラダを頼んでしまったのだが、食べる直前に彼が「生野菜って食べていいの?」と聞いてくれたので助かった。生野菜は食べてはいけないものに入っている。水で洗うだけでは不十分なのだ。お店でどんな処理がなされているかわからない生野菜。感染リスクが高い。

焼き肉で気をつけなければいけないことがもうひとつある。これは盲点だった。考えればわかることなのだが、うっかりしていた。トングで生のお肉を網に載せる。これはいい。問題はそこからで、しっかり焼いたお肉を自分のお皿に移す時に、私は最初に使ったトングを使用していたのだ。生肉を触ったトングにはどんな菌がついているかわからない。運が悪かったら感染して、あっという間に病院送りになっていただろう。

食べてよいもの、食べてはいけないもの。退院前にパンフレットを渡され、熟読したはずだったが、うっかり食べそうになることは何度もある。同居家族がいるならば、その方たちにも知っておいてもらった方がよい。私も彼氏さんに伝えておいたことで、何度か食べる前に回避することができた。

さて、年末に焼肉を堪能した私の次の楽しみはお正月に食べるすき焼きだ。なぜかわからないが、元日の夜は毎年すき焼きを食べるのが習慣になっていた。偶然、彼氏さんも同じように元旦にすき焼きを食べる家庭で育った。この日だけは普段は買わないちょっとお高めのお肉を用意する。脂ののった高級和牛。口の中に入れるととろける。もはや歯はいらない。数枚で大満足だ。ただ、一つ残念なことがある。お肉を生卵に絡めて食べられないことだ。これは本当に辛かった。

2週間の退院で外食は2回だけ。焼肉とラーメン。それ以外は彼氏さんの手料理だ。退院前に考えた食べたい物リストが役に立った。

多少の制限があるとは言え、食べたいものが食べられるというのは本当に幸せなことだ。

次の入院から本格的な抗がん剤治療が始まる。副作用で食べられなくなるかもしれない。入院までの時間は限られている。何を食べたいか。私は毎日食べ物のことを考えながら過ごした。

退院中はとにかく食に対する欲求が強かった。

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