2022年12月上旬 寛解導入療法【痩せ細った脚】

闘病記【発症~治療】

脱衣所は苦行の場所

入院2日目から治療は始まった。「寛解導入療法」というものだ。

2種類の薬を服用する。

ステロイド剤である「プレドニン」とフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に対して処方される薬「スプリセル」だ。

治療開始1週間で、異常に増えた白血球は3万5,000から410までいっきに減少した(基準値は3,300~8,600)。

赤血球や血小板の値は下限を大きく下回っているため、毎日のように輸血をしているがなかなか戻らない。

初日に先生から、「数日は辛いですよ。」と言われていた通り、最初の1週間は熱や腹痛、頭痛が続き、寝たきり状態だった。その後も体調が良いとは言えない。

腹痛は続き、お腹に水も溜まっているせいで食べられない。大きいお腹を支えながら1周100mの病棟を歩くのが精いっぱいだった。

そんな中、シャワーを浴びるというのはなかなかの苦行だ。私が入っている大部屋はクリーンルームというもので、シャワールームが完備されており、毎日シャワーを浴びることができる。とはいえ、体調が最悪だった最初の週はシャワーを浴びられない日もあった。その後は多少歩けるようになったが、それでもシャワーを浴びるだけでけっこうな体力を消耗する。

脱衣所でも一苦労なのだ。なにせ椅子がない狭いスペース。立ったまま脱ぎ着しないといけない。

一番大変なのはズボンの着脱だ。ズボンを脱ごうとしても脚が上がらない。はくときも同じ。立ったままズボンに足を通すことができない。

当たり前のことができない。

ではどうするのか。ズボンを床までずり下げていく。もう片方の足も使って何とかズボンを床まで落としたら足を抜くのだ。

私は最初、脚が重くなったのかと勘違いした。もしくはだるくて上げられないのかと。

そうではなかった。

自分の脚をまじまじと見て気が付いた。大げさではなく、太ももが二の腕ほどに細くなっていたのだ。筋肉も脂肪も削げ落ちている。ふくらはぎを触るとゆらゆらと皮が揺れた。だから立ったままズボンの脱ぎはきをするという簡単なことができなくなっていたのだ。お腹がパンパンに張っていたこともあり、脚が見えず気が付かなかった。

寝たきりだったのは1週間程度。その後は多少でも歩くようにしていた。にもかかわらずこんなにも脚が細くなるとは。自分の脚が自分のものではないような、そんな気がしてならない。

あざだらけの脚

驚いたのはやせ細った脚だけではない。

シャワールームの中で備え付けの椅子に座って身体を洗っていた時だ。

枯れ木のように細くなった自分の脚をよくよく見ると、太ももの内側があざだらけだったのだ。場所的にどこかにぶつけたわけではなさそうだ。

貧弱な脚に無数のあざ。

驚かないわけがない。

あざの理由はすぐにわかった。血小板が少ないからだ。輸血はしているものの、入院時27,000だった数値は数日後に15,000まで下がり、10日経っても23,000となかなか上がってこない。(基準値は15万8,000~34万8,000)

これだけ低いのだ。あざだらけになっても不思議ではない。

そういえばこれまで何度ダイエットを試みただろう。すらっとした、いわゆる’美脚’に憧れたものだ。あと少し内ももの肉が落ちないか、そんなことを考えて運動をしたり食事制限をしたりした。もちろん毎回挫折。多少の努力では何も変わらない。それなのにほんのちょっと寝たきりだっただけでこんなにも脚が細くなるなんて。ついでに筋肉も落ち、水がたまったお腹とは対照的に貧弱な脚になってしまったが。

そしてあざだらけという見るも無残な姿。

あざは血小板が増えていけば治るだろう。少しの辛抱だ。問題なのは腕並みにやせ細ってしまった太ももの方だ。筋力を戻すのは簡単ではない。入院2週目から始まったリハビリ。だが、リハビリというものからはまだまだ程遠い。

少しでも身体を動かして、身体を元に戻して行こう。

焦らず、一歩ずつ。

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