2023年3月 地固め療法・3クール目【エンドキサン】

闘病記【発症~治療】

一番楽な抗がん剤

3月中旬、私は3クール目の抗がん剤治療のため再入院した。寛解導入療法と合わせると4回目の入院だ。

入院初日に毎回思う。

今回はどれくらいで退院できるだろうか。

入院生活には慣れてきたとはいえ、当然だが、楽しいわけはない。まだ抗がん剤が始まっていないうちから退院の日が待ち遠しくてしょうがない。

いつも通り、外来受診を経て病棟へ上がった。ほどなくして看護師がバイタル測定をしにやってきた。そして次は薬剤師だ。今回の抗がん剤治療の内容や副作用について説明してくれた。

今回使用するのは「エンドキサン」という抗がん剤。エンドキサンのほか、ダウノマイシンやオンコビンという抗がん剤も投与されるのだが、全部足しても2時間程度で終了する。
2クール目と同じで、投与期間は1日だ。ただ、前回のように投与中に氷を舐めたり、6時間おきに尿のpH検査をしたりといった面倒なことはしなくてよい。

どの薬剤にも当然副作用はある。私の場合、2クール目とも副作用は軽度で、血球の数値も順調に回復したため、今回も大丈夫ではないかという思っている。

ただ、便秘予防のため下剤は飲んだほうがいいと看護師に言われた。抗がん剤を使うとたいていの場合便秘になるそうだ。入院前、ひどい腹痛が続き、下痢にもなったため下剤を中止していた。あの腹痛のことを思い出すと気が進まなかったが、便秘は便秘で辛かったのも確かだ。私は看護師の言うことに従って下剤を再開することにした。

※地固め療法 3クール目の投与内容※

薬剤投与方法投与時間day1day2day6day7
グラニセトロン3mg点滴静注
ダウノマイシン
生理食塩水
50mg/m2
点滴静注30分
エンドキサン
生理食塩水
1g/m2
点滴静注1時間
オンコビン
生理食塩水
1.2g/m2
点滴静注29分
プレドニン60mg/m2内服

夕飯後、医師が病室にやってきた。私の主治医は朝と晩、体調を聞きに来てくれる。体調がいいと、「変わりないです。」で終了する短い会話だが、それだけでも患者は安心するものだ。

この日は明日行う抗がん剤についても簡単に説明してくれた。そして、

「今回が一番楽だと思います。」

と言われた。副作用がないということだろうか。

もしかしたら早めに退院できるかも。

私にとって重要なのは入院期間だ。ちょうど桜の季節。今月中に退院できれば満開の桜を見ることができる。

来年は見られるかわからないのだから。

ふと、そんな風に思った。私に来年があるのかわからない。もちろん、生きることをあきらめてはいない。でも、完治する可能性が100パーセントでないことも確かだ。どうなっているかわからないような先のことを考える気持ちにはなれない。

私は小さい目標を決めた。

退院したら桜を見に行こう。

そのために今回の治療を頑張るんだ。

一番体調が良かった3クール目の入院

入院の翌日、早速抗がん剤が投与された。1日で終了。その後は尿量を毎回測ること以外は特にやることはなく、ゆっくりと時間が過ぎていった。

先生が言うように、確かに楽だった。

副作用はまったくない。

入院前にひどかった関節痛も案の定すっかり症状が治まり、動くのも楽になった。倦怠感もまったくない。前回の入院時に日中なるべく起きていたほうが良いと言われたのを思い出し、椅子に座って読書をしたり、病棟内を歩いたりして離床時間を意識的に増やした。気付けば一度も横になることなく1日を終えることができるようになっていた。

1日中起きていられるなんてすごい!

思えば病気になってから一度もなかったことだ。どこかしら調子が悪くて寝たり起きたりを繰り返していた。

私は体調も体力も回復しているのを実感した。

これなら早めに退院できる。

病棟から見下ろすと何本か桜の木を確認できた。うっすらとピンク色の花びらを付けているのが見える。平年より少し早い開花だろうか。今月中に満開になるだろう。

絶対に満開の桜を見るんだ。

改めて心に誓い、その後もリハビリに励んだ。

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