抗がん剤投与後は白血球の数値が下がっていく
1クール目は4日間抗がん剤が投与された。どの種類の抗がん剤でも投与後しばらくすると白血球の値が下がる。そしてその値が回復し、数値が安定すれば一時退院できる。
白血球が少ない時期は感染リスクが高くなるため発熱には要注意だ。
抗がん剤投与終了から3日後、それまで基準値だった白血球の値が下限値を少し下回った。予定通りだ。そしてその2日後、さらに下がる。それに伴い血小板の数値も一気に低くなった。とはいえ何か体調に変化があるわけではない。食欲もあり、動くのも平気だ。
白血球の値が底をついたのは、抗がん剤投与終了から8日後だった。ほぼないに等しいくらいだったが、入念に手洗いをする以外は特に気にすることはなく、普段通りの生活を送っていた。
白血球を増やす注射が1日1回打たれるようになった。早く回復して退院したい、それだけが私の願いだ。
| 抗がん剤投与 前日 | 抗がん剤投与 終了3日後 | 抗がん剤投与 終了8日後 | 基準値 |
白血球 | 3.620 | 3.240 | 480 | 3,300~8,600 |
赤血球 | 215万 | 325万 | 294万 | 386万~492万 |
ヘモグロビン | 7.0 | 10.1 | 9.3 | 11.6~14.8 |
血小板 | 23万4,000 | 13万9,000 | 3万2,000 | 15万8,000~34万8,000 |
急な発熱!40℃を超える!
翌日、デイルームで彼氏さんと電話をしていた。最初の入院ではデイルームまで歩いていくのが辛かった。電話をしていても30分座っているとしんどくなり、泣く泣く終了して部屋に戻っていたのだが、今回の入院ではそれはない。時間が許す限り彼との会話を楽しむことができる。
この日も体調は良く、1時間くらい話をしていただろうか。午後のバイタル測定の時間が来たため、また夜に電話する、と言い電話を切った。部屋に戻るとちょうど看護師が入ってきた。
「お熱測ってくださいね。」
クリーンルームはベッドごとに専用の体温計がある。私は枕元に置いてある体温計に手を伸ばし脇に挟んだ。
「ピピッ」と鳴り、体温計を取り出した。
「あれ?37.8度」
今回の入院で37度を超えることはなかった。今も熱があるという自覚はない。熱っぽいという感覚も、発熱した時に感じる独特の倦怠感もないのだ。それなのに、体温計の数値は微熱を通り越している。
「しんどくないですか。」
心配した看護師が聞く。
「いえ、全く。」
不思議でしょうがない。白血病を発症した時も前回の入院の時も38度前後の発熱が続き、体がほてったり、倦怠感を感じたりしたのに、今回は何も感じない。どうしてこんなに鈍感なのだろうか。
血液内科では発熱するとすぐに血液検査がある。何かに感染していないか調べる必要があるのだ。そしてその結果が出る前に抗生剤の投与が始まる。一度抗生剤が始まると熱が下がっても数日から1週間程度続けないといけない。退院間近に発熱したら大変だ。退院日が延びることになる。今回の退院の予定は来週、つまり1週間程度先だ。熱が下がれば予定通り退院できる。
このまま熱が下がりますように・・・
私は祈るような気持ちでベッドに横になっていた。すると、急に寒気がしてきた。本当に、急だった。30分前は普通に歩けたし、元気だった。それなのに、全身が寒くて寒くて震えが止まらない。2枚重ねの布団を頭から被ってもおさまらない。差し入れしてもらったひざ掛けを首に巻く。モコモコのルームソックスもはいた。それでも寒いのだ。
やばい、これは高熱になる。
そう思いながらとにかく耐えた。悪寒は2時間ほど続いた。そしてそれが治まったのを見計らい、意を決して熱を測った。多少熱感はあるが、それほど身体がだるいわけではない。それなのに・・・
「40.1」
![](https://kaochantomomoko.com/wp-content/uploads/2023/09/IMG_77712-1024x865.jpg)
私は目を疑った。これまで40度を超える発熱を経験したことがない。インフルエンザに罹った時でさえ、39度台だった。しかもあの時のほうが高熱があるという感覚があったし、体中が痛くてしんどかった。今回はどうだ。それほどの高熱があるという自覚もないし、実際そこまでしんどくない。それなのに体温計は40.1という数字を叩き出した。すぐに看護師を呼んだ。
「熱が40度あります。」
「解熱剤、飲みましょうか。アイスノンも持ってきますね。」と看護師。
高熱だからといって特別に何か処置があるわけではなかった。カロナールという一般的な解熱剤を服用し、アイスノンと冷えピタで頭を冷やした。
血液検査の結果が出た。CRPという炎症反応を見る数値が多少高い程度で、特に問題視するような状態ではなかった。血液培養もしたが、何かに感染しているとは考えにくいとのこと。「何の熱だろうなー。」と首をかしげる医師。原因がわからないというのは不安だ。
結局、発熱は白血球が回復するときに起きる反応ではないかということで落ち着いた。
翌朝、熱は平熱に戻っていた。このまま熱が上がりませんように。
そう願ったが、夕方になるとまた熱が上がってきた。悪寒に耐えること数時間。この日も40度を超えた。
退院が延びたらどうしよう。
それだけが気がかりだった。その後も毎日夕方になると熱が上がる。いつになったら落ち着くのか。電話をしに行くこともできず、私も彼氏さんも不安な日々を過ごした。
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