2023年1月 地固め療法・1クール目【姉弟の白血球の型を調べる】

闘病記【発症~治療】

骨髄移植に向けて準備が始まる

私の病名は「フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病」

抗がん剤治療だけでは根治が難しい難治性の白血病だ。入院してすぐに骨髄検査を受け、この長ったらしい診断名がついた時点で、主治医から骨髄移植が受けられるよう準備を進めていくと言われていた。

医師から説明を受けた日に母親から姉弟に話をしてもらった。ありがたいことに、何の躊躇もなく姉、弟ともにドナーになることを快諾してくれた。もうひとり姉がいるが、海外に住んでいるという理由で対象外とされた。その姉は、自分が何も役に立てないことを悔しがったが、私としてはその気持ちだけで十分だった。ちなみに骨髄バンクの規定ではドナーになれるのは55歳まで。血縁間の移植にそれが適応されるのかはわからない。医師に姉は50代前半だと伝えたところ、ギリギリですね、という反応だったからだ。

骨髄移植は造血幹細胞移植の中のひとつだ。他には末梢血管細胞移植とさい帯血移植がある。血縁者でも骨髄バンクでもドナーが見つからなければさい帯血移植となるらしい。それを聞いて少し安心した。

移植するには私とドナーの白血球の型が合致しないといけない。私の白血球の型はすでに調べてある。この検査、基本的に医療保険が効かない。49,500円が実費となる。(※実際に骨髄移植を受けると返金される。姉弟の検査費用は1人38,500円で返金はなかった。)医師から骨髄移植にかかる費用は合計で40万から50万円くらいだと説明を受けた。前年度の所得により助成を受けられるようだが、私の収入では難しいだろうとのこと。

1クール目の入院中に姉弟に病院に来てもらい、白血球の型を調べることになった。仕事で忙しい中、二人で休みを合わせて来てくれた。

医師からの説明と採血が済んだ後、私は二人がいる面談室に呼ばれた。せっかくなので少し話でもどうぞ、という病院側の計らいだ。コロナで面会が禁止されている中、限られた時間でも誰かと面と向かって話ができるのはうれしい。

姉弟と会うのは久しぶりだった。その久しぶりがこのような形になってしまったのは多少残念だが、私たちはたわいもない会話を楽しんだ。

白血球の型が適合すれば、その次は健康診断を受けることになる。そして問題がなければ移植へと進む。ドナーは数日から1週間程度入院が必要になるため、仕事を休まないといけない。二人とも比較的自由に休みを取ることができるようだが、それでも申し訳ないという気持ちになる。

適合確率は4分の1

「入院の2週間前から筋トレをしたらあかんって言われた。それだけが気がかりや。」

と弟が突然言い出した。

「は?筋トレ?」

私も姉も意味がわからない。筋トレなんて2週間くらいしなくても別にいいのではないか、というのが私の率直な感想だった。が、弟にとっては死活問題のようだ。聞けば本格的にトレーニングをしているという。そしてPFCバランスというものを意識して食事を摂っていると言い、スマホに保存しているデータを見せてきた。そういえば、前に会ったときより身体が一回り大きくなっている。太ったというより、筋肉がついてたくましくなったという感じだ。2週間筋トレをしないとせっかく付けた筋肉が落ちてしまうということだった。

なるほど、気持ちはわかる。

でも、私の命がかかってるんで(笑)

私は苦笑いしながら弟の話を聞いていた。その後も弟の筋トレ話は止まらない。ダイエットを始めたという姉は真剣に聞いている。あっという間に時間は過ぎ、「そろそろいいですか。」と医師が声を掛けにきて面会は終了した。

結果は数日で出る。

兄弟で白血球の型が適合する確率は4分の1らしい。フルマッチといい、完全に一致する場合が4分の1だ。半分だけマッチする場合もあり、最近ではそれでも移植をすることがあるようだが、まずはフルマッチのドナーを探すことになる。今回二人の白血球を調べるわけで、フルマッチする確率は半分だ。これが親せきでは1%以下、非血縁者となると数百から数万人に1人の確率になってしまう。

姉弟と型が適合しますように・・・

私は祈るような気持ちで結果が出るのを待った。

姉弟とは適合せず

数日後、医師が病室にやってきた。

「ご姉弟の白血球の検査結果が出ました。お姉さんは半分だけマッチしていましたが、弟さんはまったくでした。」

「あー、そうですか。」

私は表情一つ変えずに答えた。この場合、どんな反応をするのが正解なのだろう。もう少し残念がればよかったのだろうか。もちろん残念ではあったが、ショックではなかった。

なんとなく、本当になんとなくだが、直感的に分かっていたからだ。

姉とは多少マッチしているだろう、弟は、おそらく何もマッチしていないだろう。

これが私の直感だった。案の定、弟はかすりもしなかった。ちなみに海外に住んでいるもう一人の姉とはフルマッチなのではないかというのが私の勘だ。もし機会があればその姉の白血球の型を調べてみたいものだ。

「ご姉弟には電話しておきますので。」

医師はそう言い病室を出て行った。その日の夜、二人に連絡を入れた。結果はすでに医師から聞いているはずだ。私は改めてお礼を言った。型が合わなかったのはしょうがない。それよりもドナーになることを快諾してくれた二人に感謝の気持ちを伝えたかったのだ。

それから数日後、医師から改めて骨髄バンクについて説明を受けた。まずはバンクに登録をすることから始まる。1クール目の入院はあと少しで終了。一時退院中に書類を用意し、2クール目の入院中に登録をするということになった。

もしドナーが見つからなかったら・・・

頭のどこかにある不安は払拭できない。

骨髄バンクでドナーが見つ駆らない場合はさい帯血移植を受けることになるが、歴史がある骨髄移植のほうがなんとなく安心できる気がした。この病気になってからくじ運が悪い。期待しているのとは反対の結果になる。

非血縁者とのフルマッチ率が数百から数万人に1人というのを知り、過度に期待するのをやめた。見つからなかったときのショックが大きいからだ。

人生はなるようになると思うときもあれば、なるようにしかならない、と諦めるときもある。白血病になったのは運だと言われた。自分の力ではどうしようもないことが世の中にはたくさんある。今回もどちらに転ぶかは運次第だ。

まだまだ続く抗がん剤治療と骨髄移植。くよくよ考えても始まらない。今は目の前のことに集中しよう。

目下の目標は一時退院だ。

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